漫画「軍鶏」考察!連載終了は打ち切りだった?出版社との裁判についても調査(ネタバレ注意)

漫画「軍鶏」考察!連載終了は打ち切りだった?出版社との裁判についても調査(ネタバレ注意)

1998~2015年に「イブニング」「漫画アクション」にて連載された大人気漫画「軍鶏」について『連載終了は打ち切りによるものだったのか』の考察、そして長らく休載となった原因である出版社との裁判についての詳細を調べてみました。

初版発行日1998年10月1日発売
作者原作:橋本以蔵、作画:たなか亜希夫
巻数全22巻(コミックス)
ジャンル格闘漫画、バトル漫画
Wikipedia軍鶏のWikipedia
記事公開後も情報の更新に努めていますが、最新の情報とは異なる場合があります。(更新日は記事上部に表示しています

考察を行う上であらすじや最終回の解説を行うためネタバレを含む場合があります。
まだ軍鶏を見ていない方は最初に軍鶏を見て下さい。

軍鶏のあらすじ

主人公の成嶋リョウはエリート家庭に生まれ、東大入学確実と言われる学力を持っている子供でしたが、親の締め付けに苦しみ、16歳の時に両親を刺殺してしまいました。

その罪により、少年院へ送致されます。

両親を殺した成嶋リョウは少年院でも異例の存在で執拗なイジメを受けます。
暴力を受け、虐待を受けたリョウは非力ながらも反抗して、跳ね返していきます。

そんなリョウの前に空手の達人であり、生涯の師匠となる黒川健児が少年院にいる子供たちに空手を教えに現れます。
リョウは黒川から真剣に空手を学び、強くなる事を決意。

少年院の中では敵なしの状態になったリョウですが、真っ当な生活を送ることは出来ず自分に絡む者は手あたり次第傷つけていきます。

各巻ごとのあらすじは以下にて紹介しています。

軍鶏の最終回

どぶ組との死闘の末に瀕死の重症を追って倒れるリョウ。

朦朧とする意識の中に、リョウを見つめる一匹の鹿のような生き物が現われます。

動物のような精霊のような鹿はリョウを見つめて何も言葉を発しません。

「黙ってないで、なんとか言え!」と思うリョウをよそに鹿は去ってしまいます。

「行かないでくれ!オレを一人にするな!」
「オレを一人にしないでくれ」

と心の中で叫び続けるリョウ

しかし、その声は届きません。

両親を殺害し、様々な敵と戦い続け、戦いの人生を続けてきた成嶋リョウ

走馬灯のように過去を思い出す訳でもなく、まばゆい光を浴びる事もなく、お花畑を見ることもなく、戦いに明け暮れた人生は終焉を迎えるのでした。

そこから幾度かの季節を超えた後、リョウが死亡した場所から植物が芽吹いてくるのでした。

【考察】軍鶏の最終回は打ち切りだったのか?

「軍鶏」については最終回は打ち切りだったのかという噂が流れています。

当然、公式に打ち切りだと明言されている事はないのですが、打ち切りを噂される理由を挙げつつ本当に軍鶏は内きりで連載を終えてしまったのか考察していきたいと思います。

軍鶏が打ち切りを噂される理由

・最後の敵が魅力的でなかった

・原作者との係争で連載が中断した

・最後の敵が魅力的でなかった

軍鶏の最終回が支持されていない最大の理由は最後の敵となったどぶ組が魅力のないキャラクターであったことが要因なのではないかと考察します。

最終章以前に成嶋リョウの前に出てきた敵はいずれも魅力的でした。

空手界のヒーローである菅原直人、常人離れしたスペックで中国拳法を使う斉天大聖、世界的なバレエダンサーだった高原東馬(トーマ)、それぞれにドラマがあり激しい戦いを繰り広げていた。

しかし、最後に出てきたどぶ組はキャラクターも魅力に欠ける上に、バックボーンなどの設定も乏しく、戦闘力という点も驚異的なタフネスという1点のみの戦闘でバトル自体の魅力も足りなかった印象です。

この最終回及び最終的となるどぶ組には批判的な声があがっており辛辣な感想が寄せられているので引用してみました。

スガワラを復活させる気がないなら何故その後をあんな形で描いたのか? そして一番重要だと思った部分、リョウはなぜ親を殺したのか? いくつも物語の根幹を為す伏線らしきものがあったのに何一つ回収することのないままの最終巻、作者の描きたいものがなんだったのかさっぱりわからなかった。 たなか 亜希夫の作品を読むことは金輪際ないといえる作品でした。

引用元:Amazonレビュー(https://www.amazon.co.jp/hz/reviews-render/lighthouse/406354558X?filterByKeyword=%E6%9C%80%E7%B5%82%E4%BD%9C%E8%80%85&pageNumber=1)

この最終巻のおかげで 全てが駄作となりました。 軍鶏の単行本は家にあっても不要ですので燃やすことにします。 今後この作者の作品は2度と見ません。 読み手を馬鹿にした終わり方でした。 史上最低の最終巻、買う必要ないですよ

引用元:Amazonレビュー(https://www.amazon.co.jp/hz/reviews-render/lighthouse/406354558X?filterByKeyword=%E6%9C%80%E7%B5%82%E4%BD%9C%E8%80%85&pageNumber=1)

かなり手厳しい意見が挙げられています。

満足のいかない戦いが最後になってしまった事、そして魅力のない最後の敵によって成嶋リョウが死亡しまった事などから打ち切りだったのではないかと噂されているのでしょう。

物語としてはどぶ組を描き切っているので、この説での打ち切りの可能性は低いだろうと考察します。

・原作者との係争で連載が中断した

軍鶏は漫画の中だけではなく、漫画の外でも激しい戦いが行われました。

それが原作者と作画者による裁判です。

この裁判によって2008年から2011年まで連載は休止、これが打ち切りに影響するのではないかと言う噂も経っています。

ただ時系列を整理してみると連載休止になったのは2008~2011年、連載終了となったのは2015年とかなりタイム差があります。

この時間差を考えると裁判や連載休止になったことが打ち切りの原因であるとは考えづらいです。

連載終了となった理由の考察

私なりに連載が終了した理由を考察してみました。

連載終了の理由は「シンプルに作品への支持が落ちたから」だと考察しています。

私自身が漫画を読んだ感想と様々なレビューを照らし合わせるとどうしても最後のどぶ組編はストーリーのクオリティが落ちます。

軍鶏と言う作品の面白さにどれだけ原作者の影響があったのかは分かりませんが、裁判が終わり作画者1人で描いたのがどぶ組編なんですよね。

ストーリーテリングが不在になったことによるクオリティの低下で作品の人気が落ちていき連載終了。

このような形になったのではないでしょうか

軍鶏に限らず週刊誌で連載されている作品は連載を続けるために毎週激しい競争を行っています。
厳しい世界ではありますが、この争いに負けてしまったため連載を終える事になったのではないかと結論付けたいと思います。

各巻ごとのあらすじは以下にて紹介しています。

軍鶏に巡る出版社と作者による裁判の経緯

軍鶏を巡っては過去に2度裁判が行われており、漫画の作中ではなく漫画の外でも激しい戦いが行われました。

ここでは軍鶏を巡って行われた2度の裁判について経緯を含めてまとめてみました。

軍鶏を巡る2度の裁判

・著作権をめぐっての作画者と原作者の裁判

・映画化を巡っての作画者と映画制作会社との裁判

著作権をめぐっての作画者と原作者の裁判

近年の漫画は原作者と作画者が違う作品が多くリリースされています。

脚本を作る側と演出込みで作画をする側、共同制作を行う事でそれぞれの強みを活かす事が出来る一方で方向性の違いなどがあれば衝突する事も当然出てきます。

軍鶏の場合は共同制作が悪い方向へ出てしまい、原作者である橋本以蔵さんと作画者であるたなか亜希夫さんが対立し、2008年には裁判にまで発展しました。

たなか亜希夫さんは「橋本氏からは大ざっぱなあらすじが書かれた原稿しか出しておらず、ストーリーも人物設定もすべて自分が作り上げた」と主張しています。

一方の橋本以蔵さんは弁護士に委ねる形で独自のコメントを発表されていないので、具体的な主張は不明となっています。

裁判は2011年には決着。

橋本以蔵氏は第1話から第120話まで原作を担当していたことが認められたものの、以後はたなか亜希夫の単独作業であったと認定される形でたなか亜希夫さんが勝訴。

著作権も上記に準じる形となりました。

映画化を巡っての作画者と映画制作会社との裁判

軍鶏は映画化を巡っても裁判沙汰となっています。

映画版「軍鶏」が公開されたのは2008年、ちょうど漫画が連載休止になった時と重なります。

この事件については「駒沢公園行政書士事務所日記」によって詳細な時系列がまとめられているので引用させて頂きます。

映画化による裁判の経緯

H10.5 漫画「軍鶏」連載開始
H18.9 映画化について作画者Bの許諾が得られず
H18.10 実写版映画に関して原告被告会社間で原作使用契約書締結
H20.1 映画完成披露試写会開催
H20.4 Bが原告に対して映画上映差止め仮処分
H20.5 Bが本案訴訟提起(前訴 平成20(ワ)11879)
H20.6 被告Aと被告会社が原告に念書を提出
H23.3 B、原告、被告らとの和解成立
H23.6 原告代表が被告Aに「誠意ある対応」を要請。Aは拒否
H24.8 本件提訴

引用元:駒沢公園行政書士事務所日記(http://ootsuka.livedoor.biz/archives/52397103.html)

もともと「軍鶏」の映画化については、たなか亜希夫さんからの許諾が得られなかったので、漫画とは違う世界観で、脚本製作・映画製作を行うという認識で進められていましたが、映画製作の過程で漫画作画部分に依拠したシーンが撮影されてしまったという事で意見が対立し、裁判となりました。

結果としては上記の時系列に記載しているように和解に至っていますが、弁論準備期日で映画「軍鶏」には漫画「軍鶏」の表現の流用があり翻案権侵害となる、との裁判所の心証開示を受けた事が大きな要因になっているようです。

【ま と め】

「軍鶏」で行われた2件の裁判について解説をしましたが、漫画及び映画を製作する上でお互いの主張・正義があり、客観的にどちらが悪いというものではありません。

双方の主張が折り合わなくなってしまったという点が、裁判に至った理由なのでしょう。

読者としては作り手、書き手の才能が上手く融合して上で面白い作品を読めることを願うばかりですね。

これらの経緯を見たうえで軍鶏という作品を見てみると改めて味わい深さが出てきますので、本編の漫画も見て下さいね。