「僕だけがいない街」結末から犯人の動機、張られた伏線を考察してみた(ネタバレ注意)重要人物けんやと名言も紹介します。

「僕だけがいない街」結末から犯人の動機、張られた伏線を考察してみた(ネタバレ注意)重要人物けんやと名言も紹介します。

2012~2016年に「ヤングエース」にて連載された大人気漫画「僕だけがいない街」における謎や伏線について考察を行っていきたいと思います。

初版発行日2013年5月21日発売
作者作者:三部けい
巻数全9巻(コミックス)
ジャンルサスペンス
Wikipedia僕だけがいない街のWikipedia
記事公開後も情報の更新に努めていますが、最新の情報とは異なる場合があります。(更新日は記事上部に表示しています)

伏線の説明や人物考察を行う上であらすじや最終回の解説を掲載しております。
まだ「僕だけがいない街」を見ていない方は最初に本作を見て下さい。

僕だけがいない街のあらすじ

主人公の藤沼悟(ふじぬま さとる)は内気で協調性がない陰キャですが、「時間を巻き戻すことが出来る」という特殊能力がありました。

悟はこの能力は「再上映(リバイバル)」と名付けていました。

リバイバルは誰かしらが命の危険に晒された時に発動する能力で、命の危険に晒されないようになるまで何度も繰り返されるので、悟は面倒だと理解しながらも人の命を救うために尽力していました。

ある日、母親と一緒に外出をしていた際にリバイバルが起こります。
いつもは何が原因かを突き止めてリバイバルを終了させる悟ですが、今回のリバイバルについては原因が分からないままリバイバルが終了

その夜、母親の佐知子が何者かに殺害されます。

母親が顔見知りである誘拐犯の犯行を目撃した事で今回の殺害事件が起こったことを知る悟
リバイバルを武器に犯人を突き止める事を決意するのでした。

各巻ごとのあらすじは以下から確認して下さい。

僕だけがいない街の最終回

自らを殺害しようとして八代学(現在は改名して西園学)と吊り橋で対峙する悟。

完全犯罪を続けてきた八代に対して、唯一計画を邪魔してきた悟
悟は自らの持っている能力「リバイバル」で過去を知っていた事を告げ、八代の犯罪を未然に防ぐことが出来たのだと告げます。

八代は自分の人生で最大の幸福と言える悟の殺害を叶えるため心中しようと川に飛び込みます。

しかし、そこにはケンヤと澤田が待っており悟は無事に救出。
逮捕された八代は今までの悪事が社会に暴かれて死刑囚となります。

現世では繋がりのなかったアイリと再びである悟

自分が植物状態として生きてきた15年、僕だけがいない街。

その15年の間で自分を支え続けてくれた家族、友人。
彼らの多くの感謝を告げるところで「僕だけがいない街」は終了となります。

僕だけがいない街で張られた伏線と回収

「僕だけがいない街」は時空を行き来する設定である上に、2つの世界線が存在する複雑な造りのサスペンス漫画になっています。

世界線の整理

それぞれのストーリーが把握しやすいように張られた伏線と回収した場面について明記していきたいと思います。

ネタバレを含みますのでまだ見ていない方はまずは本編をご覧ください。

第一の世界線(2006年9月)
雛月加代、中西彩、杉田広美が八代学によって殺害された世界線
29歳になった悟は母親が上京した際、母佐知子が八代学が誘拐未遂をする姿を発見した事によって殺害される。
八代学によって濡れ衣を着せられた悟は容疑者として警察に追われることになる
第一の世界線(1988年2月)
母親である佐知子が殺害された事によってタイムリープしてきた雛月加代、杉田広美が殺害される世界線
佐知子の身を守るために因果関係が分からないまま児童連続殺人を防ごうと奔走するが加代を守り切れないまま2006年に戻ってしまう。
第二の世界線(1988年2月)
悟によって雛月加代、中西彩、杉田広美が救われる世界線
なりふり構わず加代を救おうとした事によって全員を救う事が出来たが、悟自身が八代学によって殺害される寸前まで追い込まれ、植物状態となってしまう。
第二の世界線(2003~2012年)
八代学によって植物状態となった悟がそのまま大人になる世界線
この世界線では雛月加代、中西彩、杉田広美は生存しており、雛月加代と杉田広美は結婚し、子供も授かっている。
第一の世界線の2006年は消滅しており、第二の世界線がリアルな現在となっています。

事件の伏線と回収

世界線が2つあり、それぞれでタイムリープしているので明確な伏線はないのですが、物語を面白くする伏線があるので紹介したいと思います。

伏線その1 八代学は容疑者リストに上がっていた

第一の世界線の時に八代学は容疑者リストに上がっていました。

ただ最終的には容疑者リストから外れているのですが、外れた理由は杉田広美が被害者になった点

警察は犯人が杉田広美を女児と勘違いしたと判断した為、八代学は容疑者から外れています。

悟はその事に気付いて中西彩殺害時の容疑者リストを見て、八代学がいる事に気付きましたが、母親である藤沼佐知子もリストにいた事や八代に様々な相談をしていた事から先入観によって容疑者から除外

結果として八代に殺害寸前まで追い込まれることになるという最悪の形で回収されました。

伏線その2 アイリとの再会

第一の世界線(2006年)では悟とアイリは恋仲に近い関係になります。

警察に追われる悟をリスクを追いながら匿うアイリ
自宅を八代によって燃やされて命の危険を冒す事態にまで発展しますが、アイリは頑なに悟の事を信じていました。

そんなアイリと悟は第二の世界線(2004年)で出会います。

このアイリの存在によって悟は記憶の扉を開くことに成功しますが、脳に負担をかけた事でそこから1年間寝たきり状態になってしまいます。

記憶の扉が開いた悟は八代と決着をつける事を決意しますが、第一の世界線でアイリと出会った場所に行くとそこにはアイリの姿がありました。

悟はアイリの姿を見るだけで話しかける事はしませんが、二人の魂が通じ合った形で世界線が繋がる美しい回収を見せてくれました。

犯人の動機を考察(ネタバレあり)

ここでは「僕だけがいない街」で児童連続殺人を行っていた犯人である八代学の動機について考察していきたいと思います。

ちなみに八代が犯人だと分かるのは31話(6巻最初)

物語の中盤で犯人が判明するためにストーリーの中で最大のミステリーとしては扱われてはいません。

むしろここで八代の正体が分かってからストーリーがクライマックスへと進んでいく感じですね。
この八代という人物が非常に興味深いので殺害の動機について考察してみます。

まずは八代のスペックと過去についてまとめてみました。

八代のスペック
・学年トップの学力を持つ
・自分の感情とは別に客観的な視点を持っている
・慎重で用心深い性格
・目的を遂行するため合理的にピックアップ出来る頭脳を持つ
八代の過去
2歳上の暴力的な兄がいた。
兄の行動によって度々両親が呼び出される事態になったが、両親が兄を更生させようとせず、逆に無関心を装い距離を取ったため兄は暴走。弟の学に暴力を振るうようになる。

学は学年トップの成績を残す優等生であったため、親はより一層兄を無視して学に愛情を注ぐようになると兄の学への暴力はより一層酷くなる

暴力を受けた学の心は冷静で「兄は親に必要とされなくなったことで、心の穴を埋めるため暴力行為を行っているのだ」と理解する

兄の暴行はどんどんエスカレートしていき女子児童への性的なイタズラを行うようになる。
学は兄の性暴行を行うための呼び出し役として従わされる
女児を呼び出す回数が増えていく事で、誘い出すスキルをどんどん身に着ける

狙うのはひとりぼっちの子、相手が興味を持つ話題で警戒心を解く、常にリサーチして複数の目標をストックしておくなどの戦略を身に着けていき、イタズラをされた女児を慰めたり、口止めするスキルも獲得していく

中学校1年生の時、兄がイタズラをした女児を殺害してしまう。
学を共犯として責任を取らせようとする兄は動揺しながらも死体を隠し、隠蔽に加担する。
町中が騒ぎになる中、学は兄を殺害し、自殺として処理をさせる

その後両親は離婚。
学は小学校の教員を目指し、その過程で教育実習に行くが、クラスで子供たちを見た時に「死んだ兄が内包されてること」「抑え続けてきた衝動があった」ことを自覚。

芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を読んで人生を考えるようになる

犯行の動機はなに?

過去とスペックを見たうえで八代学の犯行動機について考察してみます。

八代学の動機
・兄の狂気をダイレクトに受けてしまった環境
・具体と抽象を切り離せる視点

・兄の狂気をダイレクトに受けてしまった環境

一番推察しやすいのは環境による問題です。

兄からずっと暴力をつけ続けた事で暴力的な一面が育ってしまったという事、兄の行っていた女児へのイタズラを目の当たりにして、性的思考・性的快楽が歪んだまま育ってしまった事

これらが大きな動機だと思います。

八代の過去話に記載をしませんでしたが、物語の中ではハムスター数匹を飼った話が描かれます。
ここで八代はハムスターを水を溜めた瓶の中にまとめて放り込みます。
時間が経ってから戻ってくると他のハムスターの死体を踏み台にして溺れないようにしているハムスターが1匹
八代はこのハムスターに愛情を注ぐという場面が描かれていました。
死体を蹴落としてでも生き延びようとする姿に興味を持っているように、自身も周りを利用してでも生き延びていく強さみたいなものを持っていたのだと考察してみます。

・具体と抽象を切り離せる視点

八代学は非常に頭の良い人物です。

この頭の良さが歪んだ性癖を実行可能としてしまった点も大きな犯行動機だと思います。

八代は「心の中の足りない何かを埋められた時、それが最高に幸せな瞬間だ」と言っています。

仮に自分の中に狂気を持っていても、普通に人はなかなか行動に移そうとは思わないですよね。

それは理性を保っているからという理由もあると思いますが、多くの人はリスクを考えてしまうからだと思うんですよね。

自分のやる行動を自分の事として捉えるからリスクを感じるし、常識外れのような事は行わないんですよね。

ただ八代は主観的な事と客観的な事を切り離す能力があります。
これは勉強が出来るという能力とはまた別の能力です。
逆に頭が良ければ良いほどに自分の持っている世界が全ての世界というような感じで主観性が強くなっていく傾向にあります。

自分のやっている凶行を「人が心を満たすための必要な犠牲」と割り切ってリスクを許容できる視野の幅の広さが、児童連続殺人を行うに至った動機だと考察します。

一言でまとめてしまうとサイコパスだという事ですね。

悟が脳死状態になった世界線では政治にかかわる仕事をしていますが、感情に流されずに合理的な考え方が出来るタイプなので、政治家などには向いたタイプの人間だと思います。

犯人が行った別の犯罪について解説

ちなみに八代は心理カウンセラーの恋人も殺害しています。

恋人からは児童心理の話をたくさん聞き知識として吸収し、良きパートナーだと思っていた反面、女性としての興味はありませんでした。

婚約者はそんな一面を薄々感じていたので、女児殺害の事件について学に疑いをかけられたことから殺害に至りました。

この経験から八代はさらに慎重になっているようです。

誘拐を実行するときは「身代わりの犯人を用意する」

慎重派で回りくどくなっても、まずは相手の警戒心を解く、趣味、特技、職業、資格、免許、語学、何でも武器にする、どれかに興味を持てば警戒心が解くことが出来る。

何人ものターゲットを用意して、少しでも危険を察知すれば別のターゲットに切り替えて犯行に及ぶ

このような教訓を得て完全犯罪を行い続けています。

犯人の最後、悟に敗北した事に対する考察

八代は西園と名前を変えており最後は悟と対峙しますが、敗北し逮捕されることになります。

敗北した理由は八代がこれ以上の快楽がもう得られることがないと理解したからではないでしょうか。

八代は用心深いので普通であれば自らの足がつかないように犯行に及ぶはずですが、悟に対しては白昼堂々自らの正体を明かし、言葉で戦っています。

八代の人生観として以下のように語られたシーンがあります。

死ぬことの意味は「肉体的、精神的に満たされない状態」の事、リスクなく平穏に暮らしている今が死んでいるも同然

社会的には活躍をし、幸福そうに見えていても死んだ状態でずっと生きてきた八代

完璧に犯罪を重ねてきた中で唯一自分の計画を邪魔してきた悟。
そんな最高のライバルである悟を殺したい。

これ以上の刺激は八代にとってはないはず、最後は心中しようとしたように悟を殺害して、自らの人生も幕を閉じようと考えた事が悟に敗北してしまった理由だと考察します。

こうやって八代と言う人物の考察していくと、丁寧に深く人物を描いているなぁと感心します。

本当に素晴らしい漫画だと思います。

「僕だけがいない街」を読む方法は以下に掲載しています。

「僕だけがいない街」ケンヤを深掘り考察

「僕だけがいない街」の中でも人気が高いキャラクターが小林賢也(ケンヤ)です。

小学生離れした鋭い洞察力、大人びた対応、深い愛情

小学校3年生にしてこれらの要素を持ち合わせたスーパー小学生がケンヤですが、ケンヤという人物を深掘りしていきケンヤの魅力を再確認していこうと思います。

ケンヤの性格・人物像
・頭脳明晰
・観察力が高い
・仲間想い
・正義感が強い
・努力家
ケンヤの人物像を示すエピソード
・雛月加代が体にアザを作っている事に気付く、悟が授業中に加代の事を見ている事に気付き、気があるのではないかと推察
・ケンヤにとっては原因が分からない中で、悟と雛月を助けようとしている悟を見て大切な事だと感じ、自分も協力を惜しまず、雛月加代誘拐事件にも協力する
・第一の世界線では白鳥潤が怪しいと進言し、逮捕へと繋がっている
・中西彩に子供っぽいと指摘されムキになる
・悟が犯人に襲われ植物状態になってしまった後、悟宛ての手記を残し、澤田と共に真犯人を逮捕するという覚悟を持ち捜査を続けている

ケンヤの性格と過去のエピソードを紹介しましたが、第一印象としては子供っぽさを全く感じない聡明さを持った少年だという事ですね。

父親が弁護士なので、ケンヤも父親同様に優秀な頭脳を引き継いでおり大人びた発言をしているという点は納得がいくのですが、とにかく観察眼が鋭いです。

29歳の頃の記憶が乗っかった11歳の悟に対して「お前、いったい誰なんだ」という言葉をかけているんですよね。
またクラスの中で唯一雛月加代が暴行を受けている事にも気付いたようにとにかく観察眼が鋭い

ケンヤの観察眼はほぼ超能力者レベル、この鋭さが子供ながらとてもカッコイイんですよ。

そしてもう一つのカッコイイ要素は『仲間想いな点』です。

客観的に見て突飛な事を言って、突飛な行動を続ける悟に対しても、悟の行動や言動を容認しているんです。

それは相手の行動がどうこうという訳ではなく、悟の事を信じているからだと思うんですよね。

悟が植物状態になってからも手記を残し、もし悟が復活した時の参考になるような情報を残しつつ、ケンヤはケンヤで悟に酷い事をした犯人を許さないという想いを持ち続け犯人を追い続けるという正義感を持っていて、この真っ直ぐさと仲間への想いがとても魅力的です。

「僕だけがいない街」には魅力的なキャラクターがたくさん出てきますが、私はケンヤ(小林賢也)が一番好きですね。

初回に読んだ時のケンヤの印象と2度目以降に読んだ時のケンヤも比べてみるとまた印象が変わってきたりするので、是非読み返してみて下さいね。

「僕だけがいない街」を読む方法は以下に掲載しています。

「僕だけがいない街」に潜んだ名言を考察

ここでは「僕だけがいない街」に出てきた名言を紹介していきたいと思います。

主人公の悟は元々ドライな一面がある人物でしたがリバイバルという特殊能力を持ったことで、幸か不幸か様々な経験を得ています。

その点からも非常に深い名言がたくさん出てきているので人生を豊かにするため噛み締めて下さい。

何度読んでも深みが出てきて面白い作品ですよ。

何て幸せな時間だ…
何気なく過ごしていた、何気なく流れていった
俺が…、失ってしまった時間…

2巻 母親が死亡後にリバイバルで18年前に戻り、母親と食事した時の名言

口に出して言ってるうちに本当になる気がする(アイリ:1巻)

演じてるうちに「本当」になるような気がする(雛月:2巻)

2巻 母親が死亡後にリバイバルで18年前に戻り、母親と食事した時の名言

愛梨の「信じたい」は自分の為だよ。誰かに「信じて欲しい」の裏返しなんだよ(アイリ:3巻)

3巻 殺人容疑で追われる悟を救った愛梨の名言

自分のせいなんて思うのは思い上がりってモンだ。プラス思考で先の事を考えるんだ

3巻 佐知子の知り合いである澤田が引用した佐知子の名言

君が信じてくれたから
俺は…、まだ頑張れる

3巻 悟が逮捕された時のアイリに対する名言

未来は常に白紙だ。自分の意志だけが、そこに足跡を刻める

4巻 加代を助けられた後のナレーションによる名言

みんなまだまだ足りない事だらけだ
だけど、その足りない何かを埋めていくのが「人生」だと僕は考える

5巻 学年終業式の時に八代先生が言った名言

ひとりぼっちじゃないって事がこんなに誇らしいなんて…
はじめて知った

6巻 永い眠りから覚めた悟が周りに感謝する名言

「もっとやれたハズ」っていう言葉は「もっとやれるハズ」に換えて未来の自分に言いな

6巻 藤沼佐知子の名言

「僕だけがいない街」を読む方法は以下に掲載しています。